パリ観光の名所と言われるマレー地区で、人気のスイーツ店『パン・ド・シュークル』。
ランビュトー駅からお店までは僅か100mの距離ですが、
その間にスイーツ店が6軒もあるスイーツ激戦通りです。
そんな厳しい立地環境で人気を誇る理由は一体なんなのでしょうか?
今回は『パン・ド・シュークル』の人気の秘密に迫ります!
多様なスイーツ ~伝統フランス菓子からオリジナルケーキまで70種~
古くから伝わるフランス定番のケーキがあるのは勿論ですが、
創意を凝らしたパン・ド・シュークルのオリジナル・ケーキが
このお店の一番の特色であり、魅力でもあります。
ROSEMARY(ローズマリー)というケーキは、
オレンジの花の風味がする独特のケーキ。
底のサブレ生地にはローズマリーが入っています。
ルバーブやフランボワーズ、アーモンドミルクを使っています。
EVASION(エバシオン)というケーキは
ココナツのダックワーズ生地に、
マンゴーや、パッションフルーツ、
ココナツクリームを使っています。
JARDIN VERT(ジャルダン・ヴェール)というケーキは
アーモンドのサブレ生地に、
青りんごとヴェルヴェ―ヌの実を使った
爽やかなグリーンのケーキです。
こちらは、季節の生の果物や、
ドライフルーツを巧みに使った一品。
パン・ド・シュークルにあるケーキは、
どれも見栄え良く丁寧に仕上げてあります。
もちろんケーキ以外のお菓子もたくさんあります。
中でも大胆なハート型サブレは大人気。
マカロンの種類も数多く揃えてあります。
お土産によく売れているのはショコラの詰め合わせだそう。
こだわりのサバラン ~ケーキにスポイトを刺す!?その理由とは~
中でも異彩を放っていたケーキは、パン・ド・シュークルオリジナルのサバラン。
その一風変わったビジュアルについ目を疑ってしまいました。
なんとケーキにプラスチックのスポイトが刺さっています!
なにこれ…!!
■そもそも、サバランとは…?
現地では「ラムババ」とも呼ばれる、フランスの定番スイーツ。
簡単に言えば、ブリオッシュ生地のケーキにたっぷりのシロップを浸み込ませたもの。
通常ラム酒を使い、アルコールの風味と香りを楽しむケーキです。
シェフのディディエさんも、このサバランを私におすすめしてくれました。
「サバランはフランスの定番スイーツですが、
私たちは今の時代に合わせた新しいサバランを作っています。
商品名はBaobab(バオバブ)。
食べて頂いたら分かりますが、選び抜いたラム酒を使って新たな味を作りだしています。
ラムの新鮮な風味を残すための新しい工夫も加えています。」
もしやこのスポイトの中には…?
そう、プロの選び抜いたラム酒が入っています!
このテクニックを使う事で
ケーキの鮮度を保ち、味の変化を抑えているのだとか。
それにしてもこのド真ん中に刺しちゃう大胆さ、すがすがしい…!
さて、このなんともおもしろい姿をしたサバラン、
さっそく家に持ち帰って食べてみました!
上質なラム酒をたっぷりと含んだスポンジ状のケーキに、
柑橘系の皮とマダガスカル産バニラを使ったムースクリームの風味が
舌にしっとりと絡みます。
口内にアルコールが広がる瞬間が何とも言えません…!
アルコールを飲んで良い気分になるのと、ものを食べて良い気分になる。
その両方を備えたこのサバランに拍手です。
お店の歴史 ~元有名レストランのデザート担当だった2人~
ディディエさんは、『パン・ド・シュークル』が開店した当初のことを教えてくれました。
「かつて三ツ星レストラン『ピエール・ガニエール』でデザート担当だった私は、
同僚のナタリーとパートナーを組み、2004年
現在の地に『パン・ド・シュークル』を立ち上げました。」
有名レストラン出身のパティシエが作るお菓子ということで、
開店すぐに人気となり評判を取ったそう。
人気を得た理由のひとつとして、
当時の伝統的な菓子作りに新しい風を吹き込んだと言われています。
プロのシェフによる本格的なデザートに、
若い2人ならではのフレッシュなひと工夫が加わることで、
評判が評判を呼んだのでしょう。
商品開発 ~ポイントはリラックスしてアイデアを出すこと~
新商品の開発は、ディディエさんとナタリーさんが共同で行っています。
だいたい6週間おきに一部商品のリニューアルをしています。
「季節により花、ハーブ、果物の特色が違いますから、タイミングの良い材料を選択しています。
新しい素材を発掘したり、お客さんのニーズに気を配ることも大切です。」
絶えずお店を見ることで、おのずとアイデアが浮かんでくるそう。
「お店の休みを週2日取るのも、
リラックスしてアイデアを出すために必要と思いやっています。」
より多くのお客さんにおいしいスイーツを届けるためには
休日をしっかりとることもとても大切なのですね。
外観のこだわり ~お客さんの笑顔が並ぶ横長テラス~
パン・ド・シュークルの外観は、通りに面する広いガラス張りが特徴。
ガラスの奥に美味しそうなケーキが並び、道行く人の足を止めます。
一部、外壁の足元は板張りになっていて、
その板にはお店のロゴがレリーフ状に彫り込んであります。
さりげなくおしゃれなデザイン!
通りに面してテラスが設えてあります。
横1列のおしゃれなテーブルとチェリー色のベンチが並び、
お店で買ったケーキやパンを食べられるようになっています。
春から秋にかけてはベンチ待ちをする人が出るほど賑わいます。
店内の工夫 ~大理石で高級感を出しつつ優しい空間に~
建物のつくりやデザインについて、
ディディエさんからお話を聞くことができました。
「できて4年になるこの新しいお店は、建築家クリスチャン・ナンセ―の設計。
大理石を張り巡らせて高級感を出しつつ、優しい空間が出来たと思います。」
ホワイトとアイボリーの大理石で飾った壁の前に、
L字型のショーケースが置かれています。
ショーケースを支える台座の部分も同じ大理石を用い、
そこにもお店のロゴが彫ってありました。
外にあったロゴと同じスタイルですが、木と石では文字の雰囲気が違って見えます。
バランス良く並べられた色とりどりのケーキ類、
すっきりと整理された棚のディスプレー、
塵ひとつ無いお店の床、
どれをとってもお客さんへの気配りが見られ、訪れる人に心地よい場を与えています。
入り口の隣にはカウンターが設けられ、立ったままで食べる事が出来ます。
反対側には座席が2つあります。
お年寄りや子連れの方に座ってもらえるよう配慮したそうです。
パッケージ ~2人で決めたこだわりのデザイン~
「パッケージの選択も私たち2人の共同作業です。
パン・ド・シュークルのイメージに合う色を探してこの二色を選びました。
シンプルで効果的な色の組み合わせだと思っています。」
オレンジカラーに黒のロゴが入っています。
この形は他のお店でも使っているようですが、
いろんな形のパッケージを見て選び抜いた結果、
お客さんになじみ深いこのスタンダードな形に決めたそう。
持ち帰り用のサックは白抜きのロゴと同色の紐付きです。
組織づくり ~役割も時間もメリハリをつけることが大切~
「組織作りの基本は、まず自分の仕事に誇りと情熱を持ってもらうことだと思います。
更にそれぞれの役割を明確にして、その役割を果たしてもらうことです。」
パン・ド・シュークルは火曜日と水曜日が休みです。
パティシエの労働時間は7:00から15:30まで、
その時間が終われば後は自由時間となります。
「フランスはご存じのようにプライバシーを大切にするお国柄ですから、
プライベートに関わる事は無いです。
スタッフから相談があれば、その都度相談に乗るよう心がけています。」
役割も時間もメリハリをつけることで、より良い組織づくりを実現し
お客さんに喜んでもらえるスイーツを作り続けることができるのですね…!
お客様の傾向 ~常連客から観光客まで、柔軟に対応~
『パン・ド・シュークル』が出来て13年。
常連客も増え、ガイドブックでも紹介されるようになり、
マレーを訪れる観光客が来店することも多くなりました。
観光客の方からは
「オリジナル商品はどれ?」「このお店のお薦めは?」
と聞かれることが多く、それに対応できるよう常に考えているそう。
また、周辺に若い人が集まる場が増えたこともあり
若年層のお客さんも多くなったとのこと。
来てくれるお客さんのニーズにしっかり対応する、
そんなシェフ2人の思いは、日々パン・ド・シュークルを進化させ続けます。
まとめ
なんとも不思議な見た目のスイーツ、スポイトの刺さったサバランが生まれたのは、
単に形を変えて目先の変化を出しただけでは無く、
「美味しい」という一番大切なキーワードを追求したから。
このように、パン・ド・シュークルの最大の魅力は
ディディエさんとナタリーさんが二人三脚で生み出すアイデアの数々です。
素材の持つ味を活かした工夫、
一品一品手抜きの無い丁寧な作り、
情熱が伝わるものづくりの姿勢。
これらもすべて二人三脚でやってきた信頼関係があってこそ
保たれてきたポリシーなのでしょう。
パリの有名店がこぞって日本出店を競っています。
そんななか、パン・ド・シュークルは未出店。
その理由はクオリティを保つことへのこだわりのようです。
いつの日か日本でも味わう事が出来たらと思いました…!
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